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「ヨセフの子イエスではないか」ヨハネ6:42


 ユダヤ人が発した文句の中から、ヨハネが「あれは、ヨセフの子イエスではないか」という言葉を取り出したのは、当時、ユダヤ人キリスト者の間に広まっていた「エビオン派」のキリスト論に対する批判を意図してのことと考えられます。「エビオン派」は、イエスの神性と人性を分けて、イエスの神性を否定していました。そのためヨハネは、イエスが「神から出た者」である(46節)と明確に証言します。

 イエスの神性と人性の関係を巡っては、初期のキリスト教会が長期的に議論を続けることになりますが、最終的にA.D.451年の「カルケドン会議」において「カルケドン信条」が表明され、「イエス・キリストは……まことの神にしてまことの人」であるという公的な信仰告白が成され、「エビオン派」的なキリスト論は、異端説として退けられるに至りました。